- ● 浜渦正志がリスナー視点完全無視?のコアな楽曲解説をします
※タイトル後の()内は、収録時のミュージックナンバーです
1.ライトニングのテーマ ― 閃光(M2) |
前半部の原曲にあたる「ライトニングのテーマ」はピアノと弦の編成でした。オーケストレーション前の打ち込み時のピアノのスコアを活かしているので、原曲の原曲からアレンジし直していると言えます。とはいえ、オーケストレーションされた曲も打ち込みと大きな差はないため、結局雰囲気はいずれも変わりはありません。ただ、サビを引っ張っていた弦がいないので、そこはいくらか聴き応えは変わっていると思います。後半は「閃光」のアレンジですが、ソロアルバムの「Vielen Dank」を作っていたときから構想はあったのですが、それが「ライトニングのテーマ」にもつながっていったので、「閃光」はある程度の差別化が必要で、また原曲の頑強さにいかに太刀打ちしていくかというところも大きなポイントでした。FFXIIIの開発後、ピアノで何度か「こんな感じかな」とグルーヴを考えながら弾いていたものを徐々に形にしていったのですが、黒田さんに激しく演奏していただいたこともあって、ピアノ一台でもしっかり闘えたのではないかと思います。
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2.FINAL FANTASY XIII 〜誓い〜 ー サンレス水郷(M1) |
原曲は「テーマ曲」ということで、特に大きな仕掛けも細かい捻りを施したわけでもない、かなりオーソドックスな作りになっています。ピアノアレンジに際しても、かつて2度ほどやった「テーマ曲クラスのバラードの伴奏は三連で」という個人的な王道パターンをここでも採用しました。かなり「お仕事」的な感じになったかもしれませんが、このくらいでも「もっと原曲に近づけてほしい」という声もありますし、なかなか難しいところです。ピアコレはこういった難しさがあり、全体的にどこまで崩すかの精査はいくらでもやりたいものです。スコアはもう少し長い展開があったのですが、実際の演奏ではたっぷりしすぎるかもということで、黒田さんの提案でその場で短縮してもらいました。完璧な尺!
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3.ドレッドノート大爆進(M4) |
原曲は個人的にXIIIのベスト5に入る曲で、ゲーム的にもサガフロ2ほど(?)の自由な曲調にするつもりはなかったものの、諧謔の底力は序盤からしっかり存在していると思います。むしろ拍子抜けするほどのサビのストレートさが拍車をかけてる気さえします(笑)。そしてやはりそのストレートさはただ泳がせておくのではなく、たった二小節で引き戻し…「諧謔こそが日常」のような曲ですね。原曲ではたくさんのオケ楽器が整然と歌い上げているので、そういった狙いが薄れていたところもあったのですが、やはりピアノはこういうのに向いてますね。そしてさすが黒田さんでした。本当によく理解して弾いてくださいました!
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4.ガプラ樹林(M3) |
破壊を施した方の曲ですが、原曲の展開は割としっかり残っているのでその印象は少ないかもしれません。大きく脱線したかと思うとすぐに元の世界へ戻る…の繰り返しという、夢の中で寝ぼけて平均台の上をいくら進もうとしても踏み外してしまうような苦しさ…そんな嫌らしい構造を作るのは非常に楽しかったです。破壊だらけバージョンのピアコレみたいなものも作ってみたいですね。
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5.歓楽都市ノーチラス(M5) |
黒田さんのアドリブがかなり効いている曲です。思いのままに編曲し、思いのままに打鍵してもらう…それが大当たりだったと思います。想い出の曲ですし、ぐっと来るものがあります。
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6.ヴァニラのテーマ ― 優しい思い出 ― 帰郷(M6) |
物語風に、ドラマチックに展開しています。ヴァニラの心情の多くを語らせた、珍しくイメージを優先したアレンジだと思います。そういう作業もやはり好きで、こうやって振り返るとXIIIのピアコレも意外とバラエティに富んでいたんだなと。本当にこういう曲解説や手記は一ヶ月、二ヶ月経って何度も聴いてからでないとなかなか文章にまとまらないですね^^
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7.生誕のレクイエム(M8) |
この曲も原曲の持ち味を改めて表現し直したいというところからアレンジした曲で、大まかな構造は原曲と変わりません。その表現したかったのは、恐怖を超越した狂気的な明るいコードで、あとはそれをどこまでグルーヴ感、テンポ感で引き出すか、モタモタした感じにならないか…が問題でしたが、黒田さんがバリバリ弾いてくださったので、「生誕のレクイエム」も消化完了!と相成りました。このように総括的な意味で選曲した曲が多く、いわゆるドラマ性が高いものの割合が高くなったためか、ラスト曲候補が多く、ラスボス曲なのに後ろから4曲目の配置になってしまいました(笑)。新規の展開部が終わり、3度目の「狂気の反復」が訪れるところの冷ややかな明るさがこの曲のポイントかなと思います。3度目の意味を演奏力で…ということで、やはり今回のピアコレは演奏の表現が重視されたアルバムだったと言えるかなと。
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8.ファングのテーマ(M10) |
たくさんの要素が入ってる原曲を、またもあれもこれもと二段のスコアにぶち込んでしまいました。それをコンサートでサラッとバシッと弾いてしまったかのような…このスケルツァンドぶりが本当にカッコいいです。ラストにかけてそれにますます拍車がかかるのですが、黒田さんはやはり「わかってらっしゃる!」。編曲もアドリブも演奏も全てがどんどん諧謔(またコレ^^)の彼方に…これも黒田さんとのタッグが成功したと思わせてくれる一曲です。
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9.回想 〜「スーリヤ湖」のモチーフによる〜(M7) |
今回は10曲とXのときより曲数が少なかったのですが、原曲の隠れた持ち味を引き出したいものを優先したことで構造が大きく壊れず残ったのが7曲、そして看板曲ということで壊しにくいのが2曲(「ライトニングのテーマ~閃光」と「誓い~サンレス水郷」)あったということで、「破壊して好き放題作り直す」という曲が「スーリヤ湖」だけになりました。スーリヤ湖の原曲はAメロ、サビというようなポップな構造でないため、アレンジの際には自ずと主題を使って新曲を作るというような感じでやります。Xでいうと「ビサイド島」や「祈りの歌」がそれで、そのまま構造も原曲を尊重してピアノ化するとのっぺりしてしまうので劇的に変えるパターンです。「Choose to Fight」や「ビルジ湖」「ラグナロク」はそれに適していて是非やってみたかったのですが、やはり「原曲の持ち味を改めて表現し直したかった」曲が上位を独占してしまった感じです(笑)。そういうこともあって、この曲は自分の過去作の中ではいかにも自分節ということで特異なものではないものの、このピアコレの中では貴重な存在になっています。破壊曲が一曲だけということで暴れる…という感じではありませんが、いよいよFFXIIIの最後のほぼ新曲扱いの作業ということで、長かった開発を懐古しながら自然体で作りました。スコアはデータで打ち込むのですが、練習番号B…10小節目からCまでの15小節間はまったく先の展開を計算せずに、気の赴くままに一度もひっかかることなく一気に書いてみました。うとうとしながら自動的に書いてる…という感じですね。曲順はラストに持ってくるつもりでしたが、ゲームのドラマ性を優先して9曲目にしました。一番最後に手がけた曲でもあり、収録も最終日のラストでした。
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10.FINAL FANTASYXIII プレリュード FULL VERSION(M9) |
バッハ的でもあり、現代的でもある…とは黒田さんの談。収録時に通訳でお手伝いいただいたバロック王の福島康晴さん(作曲家、声楽家)に気に入っていただいて、ずっとベースパートを鼻歌で歌っておられたのが嬉しかったですね。クラシカルな部分と現代的な部分がどれだけ共存できるのか多少不安に思っていたのですが、ここまで引き立て合い、混ざり合うとは…!実はこの曲こそがXIIIの音楽の大テーマでもあった「ハイブリッド」の最たる存在であり、ある意味それを意図して巧くまとまった「閃光」(原曲)の上を行ってるのではないかとも思います。なんだかんだでどの曲もとても楽しかったなと。最後までありがとうございました。
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